「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」(米原万里)

「今日は、米原万里の『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』を紹介するよ!」
「へえ、変ったタイトルだね。米原万里って、どういう人なの?」
「まあ、ロシア語の通訳だった人だね。そのうち、エッセイも書くようになって、その余りの面白さに、ものすごく話題になった人なんだよ」
「ふーん」
「ソビエト連邦が崩壊して、ロシア共和国になり、その大統領であるエリツィンの通訳として活躍した人でもあるね…。エッセイストとして活躍しはじめてからは、TVにも出たり、週刊文春に連載を持ったりして、大活躍の人だったんだよ」
「へえ」
「若い頃の写真を見ると、日本人離れした超美人で、橋本龍太郎に言い寄られた事もあったそうだよ。ただ、残念なことに、ガンで若くして亡くなっちゃったんだけどね…」
「うん」
「その彼女が残した本のなかでも、今日とりあげるこの本と、もう一冊、ものすごく面白い本があってね。今日は、そのうちの一冊、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』を紹介するね」
「うん」
「これは、彼女が小さい頃、小学校三年生の時、父親の赴任先であるチェコスロバキアのプラハに引っ越して、現地のソビエト学校に通っていたころの、友達3人について書かれた本なのね」
「ふーん。かなり変わった経歴だね。ソビエト学校って、何なの?」
「それはね、現地語であるチェコ語ではなく、当時、共産主義の君主国であったソビエトの言語、ロシア語で授業を行う、まあ、チェコ内での一種の外国語学校だったわけね」
「そうなんだ」
「当時チェコは、東側に属していて、宗主国であるソビエトの庇護下にあったわけよね。米原万里の父親も、日本共産党の幹部職員として、現地にある機関紙の編集にあたっていたわけよ」
「ふーん」
「そこで出会った3人の友だちについて、その思い出と、数十年ぶりでの再会が描かれているわけなんだけど…これがもう、ものすごく面白いの!」
「へえ」
「その3人というのは、、リッツア、アーニャ、ヤスミンカと言うんだけど…まずギリシャ人のリッツアの話から始まるのね」

ただでもらった馬の歯を見るものではない―「贈物にケチをつけるな」という意味のヨーロッパ各地に伝わる諺である。
(略)馬を品さだめするときの決め手が歯であるという生活の知恵のほうに関心してしまう。
(略)そして必ずリッツァのことを思い出す。

「リッツァの両親は、軍事政権による弾圧を逃れ、亡命してきた共産主義者だったのね。リッツァは、生まれてこの方、祖国であるギリシアの土を踏んだことがない。それなのに―」

(略)まだ一度も仰ぎ見たこともないはずのギリシャの空のことを、
「それは抜けるように青いのよ」
(略)ウットリと目を細めるのであった。
(略)「マリ、男の善し悪しの見極め方、教えたげる。歯よ、歯。色、艶、並び具合で見分けりゃ間違いないってこと」

「リッツアは、勉強は出来なかったけど、性に関しては、クラスの中でも恐ろしく詳しい権威者だった。それは、彼女の兄のミーチェスがものすごい美男子で、女性にモテモテであったことから、彼女の性に対する情報源は、このミーチェスによるものと思われた。そしてさらに、ミーチェスをしのぐ美男子が彼女の叔父にいるらしい」
「うん」
「そして、リッツアの母親も、すごい美人だった」

「若い頃は、さぞ大変だっただろうね」
「うん。競争率高かったみたい。パパは一目惚れで、一年間しつこく付きまとったんだって」
リッツアの父は、工科大学三年の時に、ドイツ軍に占領されたアテネを抜け出し、山岳地帯のゴルゴピ村にあった左派の拠点に赴いて反戦反ナチスの運動に身を投じる。村の井戸に水くみにきた当時十八歳の母に出会って、激しい恋に落ちたというのだ。
「ママは嫌で仕方なかったんだって。ママが嫌だったのはね、パパが醜いからじゃないの。政治に絡むのが嫌だったんだ」
「じゃあ、リッツアのママはコミュニストじゃあないの?」
「絶対に、死んでもならないって言ってる。(略)ママの家は、共産ゲリラのたまり場だった。ママには、ママよりもさらに綺麗な姉さんがいてね、村一番の美女だった。ママの家に集まるゲリラの男たちは、みな競って姉さんを自分のものにしたがった。ところが、姉さんは、敵対する王党派の男と恋に落ちてね。両親とゲリラの連中が何度も何度も別れろと説得したのに、姉さんは耳を貸さない。そしたら、どうなったと思う?ある夜、姉さんが家に帰ってこなかった。翌朝、家の前の栗の木に、吊るし首になった姉さんの身体がぶら下がっていた。さんざん慰み者にされた上でね」
「誰がそんな惨いことを」
「あれは、共産ゲリラの仕業だろうってママは言うの。嫉妬がらみの。(略)」

「戦乱に明け暮れたヨーロッパの中に生きる家族たちには、みなそれぞれの辛い歴史があったわけよね」
「うん」
「そして、万里の父の任期が終わり、一家は日本へ帰国することになった。帰国後、リッツァとは、文通でやりとりがあったが、それも途絶えがちになっていった…」
「うん」
「そんなある年、プラハに大事件が起こる。チェコの改革派が起こした自由革命に対し、ワルシャワ条約機構軍が戦車でプラハを蹂躙する…。その事件後、プラハ・ソビエト学校は閉鎖される」
「うん」
「そして、80年代後半、東欧の共産党政権が軒並み倒れ、ソ連崩壊へとつながっていく…。著者は、かつての友人たちがこの激動の時代をどう生きていったのか、無事でいるのだろうか、と、矢も楯もたまらず、昔学校のあったプラハへ飛ぶんだよね」
「うん」
「しかし、学校はすでに閉鎖され、卒業者名簿もないと言われる。あんなに祖国ギリシャに憧れていたリッツァ、今はギリシャにいるのだろうか…」
「うん」
「著者は、プラハにあるギリシャ人コロニーの学校へ、わずかな手がかりでもないかと足を運ぶ…」

どこからともなくピアノを弾く音が聞こえてくる。
「ああ、リッツァが、歌っていた歌のメロディーだ!」

「しかし、そこの責任者も、リッツアの消息はわからないという。あきらめかけた時…。」

その場をひきあげようとするところで、腕をつかまれた。
「ごめんなさい、リッツァ・パパドプロスを探しておられるっておっしゃいましたよねえ」
声の主は、目鼻立ちのくっきりした大柄な女性だった。
(略)「リッツァをご存じなんですか?」
「カレル大学で寮が同じだった同国人に、リッツァ・パパドプロスという子がいましたよ」

「著者は、藁をもすがる思いで、大学に赴いて、卒業者名簿を調べ始める…。リッツァの名前はないが、ソリティア・パパドプロスという名にぶつかる。これがリッツァなのだろうか?」
「うん」
「さらに、ギリシャ人コロニーで、事情通として紹介されたエバンゲロスという居酒屋経営の男に聞いてみると…」

「(略)突然ですみません。三〇年前に別れた、女友達を探しているんです」
「名前は?」
「リッツァ。リッツァ・パパドプロス。兄さんの名は、ミーチェスでした」
「僕の姪だ」
「……」
「ソリティアは、姉の娘だし、ドミトリウスは、息子だ」
その瞬間、記憶の回路が繋がって、思わず叫んでいた。
「そう言えば、リッツァのママにそっくり!」
(略)「ああ、リッツァは、ソリティアの愛称で、ミーチェスはドミトリウスの愛称だ」

「リッツァの一族は、父親が、ソ連のプラハへの軍事侵攻を批判した事が理由で、失職し、没落の一途をたどっていたのね。そして、リッツァは、現在、ギリシャでなく、ドイツのフランクフルトで、移民相手の医者をしている…。電話番号を聞き出し、懐かしいリッツァとの再会にこぎつけるのだった…」
「ふーん」
「そして、万里は、リッツァの父親が失職してからの、過酷な一家の生活について打ち明けられる…。父親は死に、また、美男であったミーチェスの悲惨な運命も。そして、あれほど性についてあけっぴろげであったと思えたリッツァ自身も、本当はすごく臆病で、今の亭主に会うまで何の経験もなかったことなど…」

「ねえ、リッツァ、質問していい?リッツァは、なぜ、ギリシャへ帰らなかったの。(略)いつもギリシャの青い空のこと自慢してたから、てっきりもうギリシャに住んでいるものと思ってた」」
「(略)夢にまで見たギリシャの青空はほんとうに素晴らしかった。(略)でもね、マリ、(略)素晴らしかったのは、青空だけだったのよ。いちばん、我慢できなかったのは、ギリシャでは、女を人間扱いしてくれないこと。それに(略)犬猫など動物に対する嗜虐性にはついていけなかった。(略)」

「それでも、リッツァの住まいに案内され、旦那さんや子供に挨拶し、ふとTVを見ると、ギリシャ語が流れている」

「うん、家でも、診療所でも、ほとんどギリシャのチャンネルしかつけてないんだ」
「でも、よく電波が届くわねえ」
「バルコニーに出てご覧」
(略)アンテナの凹部は、ギリシャの空の方に向かっていた。リッツァがあこがれ続けたギリシャの空の方角に。

「ね、すがすがしくも、どこか懐かしい、おとぎ話のような話でしょ?」
「うん。面白いね」
「そして、ヨーロッパの、共産主義体制の崩壊という大事件に巻き込まれた歴史の重みってのも感じるよね。その中を、かつての知り合いを訪ねてさまよい歩く主人公は、さながら歴史と追憶を旅する冒険者って感じね」
「そうだね」
「今紹介したのは、この本の中に収められた三編のエピソードのうち、冒頭に置かれている『リッツァの夢見た青空』って話なんだけど…このほかにも二編あるんだよね」
「ふーん」
「二編目の『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』は、こんなふうに始まるんだよね」

「ハハハハ、ザハレイドウが走っとるわ、走っとる」
スクール・バスの運転手さんは、アーニャのザハレスクという苗字をなぜかザハレイドウと妙ちくりんに語尾変化させて呼ぶ。
(略)アーニャがバスに追いつこうと懸命に走る姿が目に入ってくることがよくあった。今日もそうだ。
「ハハハハ、よくもまあ、ああ不格好に走るもんだ。(略)」

「アーニャは、人の名を呼ぶとき、いちいち『同志』と頭にくっつける、「信念」を持っていた。それが、ナチス・ドイツを駆逐するどさくさに、無理やりソ連の衛星国にされてしまったチェコ人に、顰蹙を買う事も構わずに。それが正しい呼び名だと信じて疑わないのだった」
「ふーん」
「でも、心根はとてもやさしく素直で、話も面白く、一緒にいて楽しい仲間として、誰からも、愛されていた。そして、アーニャには、もうひとつ、奇妙なクセがあった。」

(略)アーニャがことあるごとに嘘をつくことに私もクラスメートたちも気付き始めた。癖というか、ほとんど病気のようなものだった。
(略)「不思議だよねえ、なんでああも次々と嘘をつくのか」
(略)「そうなんだよねえ。アーニャって、まるで呼吸するみたいに自然に嘘つくんだよねえ」
(略)嘘つきアーニャは、どうしようもない嘘つきであることも含めて私たちに愛されていた。

「チェコのソビエト学校は、各国の共産党幹部の子弟の通う学校で、各人の出身地に対する愛情は強烈なものがあった。また、それは、小国であればあるほど度合いの強いものに思われた。アーニャの出身は、小国・ルーマニア。アーニャも熱烈な愛国者だった。そして、ある日父親の転勤と共に、故国・ルーマニアに帰ることになった…」
「うん」
「それから月日は流れ、1989年のある日、ルーマニアに歴史的大事件が起こる。市民の蜂起により、チャウシェスク政権が倒れ、チャウシェスク大統領が処刑されるという事態が起ったのだった。幹部クラスとして暮らしていたはずのアーニャ一家はどうなってしまったのか?手紙を出しても、返事は来ない。著者は、ルーマニアのブカレストへ旅立つ…」

かつて東欧のパリと讃えられた街に、その面影はなかった。荒れ果てた町の風景に、何よりも人々のすさんだ表情と、何かに怯えるような落ち着きのない瞳に衝撃を受けた。
(略)壊された建物の瓦礫はいまだに片付けられないままだし、崩れかかった古い建物、建設途上でおっぽり出された巨大な鉄筋コンクリートの建造物が立ち並ぶ。目に付いたのは、大量の野良犬だった。

「そして著者は、アーニャの家族に会い、輝かしかった共産主義国家の、片隅で暮らしていた人たちの、悲惨な末路をまざまざと目にする…。その果てにいよいよ…」

(略)駆け上がってくる女の姿が目に飛び込んできた。
「ハハハハ、ザハレイドウが走っとるわ。よくもまあ、ああ不格好に走るもんだ(略)」
スクール・バスの運転手(略)の声に続いて、はやし立てる悪ガキたちの歓声が聞こえてきそうだった。

「ここのところ、何べん読んでも、感動しちゃうね」
「ヨーロッパの共産主義国って、大変なところだったんだねえ」
「最後の話は、もっと大変なんだよ。『白い都のヤスミンカ』っていうんだけど…」
「うん」
「冒頭、学校の授業で、自国の歴史についての発表をとうとうと行うはかなげな美少女、ヤスミンカの描写から始まるのね。ヤスミンカの母国は、ユーゴスラビアだった。古代より、ローマ人をはじめ、スラブ人、マジャール人、トルコ人の係争の地となってきたのが、ベオグラード市…トルコの言葉で、『白い都』と呼ばれる都市だった。しかし、城砦が白い色をしていたという痕跡はない。ではなぜ、トルコ人は、白い都と名付けたのか?と、ヤスミンカは、教室中を落ち着いて眺めまわして、」

「それは、初めてこの都市を訪れたとき、たしかに砦が白く見えたからなんです」
ヤスミンカはまだ転校してきて一週間も経っていないというのに、この理路整然とよどみなく流れる正確無比なロシア語はどこから来るのだ。
(略)「河面からは乳白色の靄が立ち上がっていたのです。白い靄に包まれた都市は、折から差し込んできた陽の光を受けてキラキラと輝いていました。(略)あまりの美しさに、トルコの将兵は戦意を喪失し、その日の襲撃は中止になった、と。(略)」
その日以降、ヤスミンカは、クラスで一目も二目も置かれる存在になった。

「だけど、ヤスミンカは、孤独な心を抱えていた。祖国・ユーゴスラビアが、チトー大統領のもと、社会主義から乖離している裏切り者だとみなされていたからだった…。それで、同じく、冷遇されている日本共産党の立場にいる万里と、友達になろうとする…」

「ねえ、帰りにうちへ寄らない?」
(略)「ありがとう。すごく嬉しい。私も初めてヤースナが暮らすにやって来た日から、ずっと惹かれていたから。でも、近寄り難くてためらっていたら、ヤースナの方から声をかけてくれたでしょう。言葉にならないほど嬉しかったんだよ」
「マリには、私と同じ種類の孤独を嗅ぎつけたの」
いきなりこちらの心臓を鷲掴みにされて面喰った。やっとのことで聞き返した。
「孤独?」
「そう。どうしようもない孤立感」
(略)「学校通うの辛くない?」
「分かる?」
ヤースナは私から目をそらせるように横を向き、声を出さずにうなずいた。ヤースナも学校に通うのが辛いのだ。

「マリは、ヤスミンカの家に招かれ、彼女の父親のパルチザン時代の話を聞く。少年時代、嫌っていた老教師が、子供たちを守るために、身代わりとしてドイツ軍の犠牲になった話…」
「うん」
「そして、マリは、ヤスミンカは、北斎の絵が好きだということを聞いて、絵葉書を見せるため、自宅に誘う。嬉しがり、飛び跳ねてきたヤスミンカだったが、マリの家の前で、立ち止ってしまう。」
「うん」
「まるで、下心があったようで、悪い、と言うのね。それに対し、マリは、自分こそ、つまらない動機で近づいたのだ,と告白する」

私はヤースナに、親たちの属する党の立場が対立しているみたいだけど、私はそんなことに縛られない人間関係を作れるんだと自分と周囲とに示したかったのだということをひどくまとまりなく話した。話しながら十月革命広場の街灯がすでに点っているのに気付いた。街灯の光が風景ににじむように広がっていく。。
「泣かないでよ、マリ。私も悲しくなっちゃう」
ヤースナが肩を抱いて頬をよせてくる。
「いつまで続くんだろうね、この仲違い。でも、マリとはずっと友達でいようね」」
そういうヤースナの頬も濡れている。それに促されてさらに涙が溢れてくる。でも、今度は嬉し涙も混じっている。
(略)この日からヤースナは、私にとって無二の友となった。

「そして、プラハで過ごした最後の一年間は、どこへ行くにもヤースナと喜びや驚きを分かち合うようになったんだよね。マリが日本に帰るとき、クラスのみんなが思い出帖を回覧して書いてくれたんだけど、ヤスミンカは、そこに絵と短い文をい書いたのね」

(略)「愛しいマリ」という呼びかけで始まる文章には、「マリには別な友達ができる」「私のことを忘れる」と読みとれる箇所があって気になった。

「そしてついに、ヤスミンカからピタリと手紙が来なくなってしまう。リッツァによると、ソビエトから転任してきた校長に、授業中、名指しで、ユーゴスラビアの社会主義をねちねちと陰湿に批判され、ついに衝突してしまい、退学したという」
「へえ」
「すっかり消息不明になってしまったヤスミンカ…マリは、いつしか彼女のことを思い出の中に閉じ込めてしまっていた」
「うん」
「しかし、1991年、とんでもない事態が勃発した。ボスニアヘルツェゴビナ戦争。クロアチア人とセルビア人による、民族浄化とも言える身の毛もよだつ果てしもない殺し合いの戦闘が始まった」
「うん」
「強制収容所、集団レイプ、NATO軍による空爆…凄惨なニュースが矢継ぎ早に飛びこんで来る。マリは、ヤースナの安否を確認するため、思い出帖に書かれた、ベオグラードのヤースナの住所を訪ねる」
「うん」
「そこはアパートだった。古くから住んでいるという夫人にきくと、ヤースナの一家は二十年前くらいに引っ越したという」

「それで、その後一家はどこへ?」
「たしか、サラエボへ移住されたはずですよ」
(略)嘘だ。嘘であって欲しい。ボスニアのサラエボなんて、今最大の激戦地ではないか。

「マリは、ガイドの青年が必死で止めるにもかかわらず、友人のためにまさに血で血を洗う激戦地へ向かおうとする…と、このヤスミンカの話の続きは、要約するにはもったいなさすぎるから、本で読んでね」
「ええー」
「ホントに感動もんなんだよ。最後の最後、はるか昔の『白い都』が、その姿を現すラストまで…。こういう本は、人が一生に一度書けるかどうかみたいな素晴らしさだよね」
「ふーん」
「といった矢先で悪いんだけど、米原万里には、もう一冊、素晴らしい本があるんだよね。それも、機会があったら、紹介できると思う。時間はかかるかも知れないけどね。じゃあ、またね!」

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