ホラー映画5選

「今日は、特別編として、映画の話をするよ!」
「本じゃなくて?」
「そう、いつもいつも本の話題ばかりだと、疲れるでしょ?映画だって、本と密接にかかわりあっている場合もあるんだし、鑑賞するという点においては、本と通じるところがあるでしょ」
「それはそうだけど、そうすると、このブログの看板にいつわりありということになるんじゃ…」
「いいの!ここはあたしが自由にやるブログなんだから!最近の本屋さんでは、DVDも売ってるんだからね!hontoだって取り扱ってるし!」
「それはそうだけど…」
「とりあえず映画に関する本を紹介しようかとも思ったけど、せっかく夏なんだし、ホラー映画の話をするね」
「えーやだー。お姉ちゃん、そんなにホラー映画って見てたっけ?」
「あたしも、あんまり見てる方じゃないんだけど、ホラーといってもいろいろあってね、なまじのヒューマンドラマよりも、深く感動できるホラー映画もあるんだよ!」
「ふーん」
「もちろんくだらないのも多いけどね。最近見たのでは、スティーヴン・キング原作の『IT』なんて、ひどい出来だった…。怖くもなんともなかった。有名どころでは、『リング』『貞子』なんかもそうね。怖くもないし、感動もできない。」
「へえ」
「今日は、あたしが過去に見てきたホラー映画のなかから、特に面白かったもの、その中でも、なぜか世の中から埋もれてて、あまり取り上げられない作品を本紹介するね」
「お姉ちゃん、5っていう数字が好きだねえ」
「だって、切りがいいでしょ?これからも、記事のうち10本に1本くらいは、この手の記事を上げていこうと思うの。」
「そうなの?」
「そう、たとえば、アクション映画ベスト5本とか、アニメーション映画ベスト5本とか…。とにかく、夏ももう終わりだから、取り急ぎ、ホラー映画5本を紹介するね!できるだけ、今じゃ忘れられてる珍しい作品を紹介するから、気になった人は、検索するか、DVDを探してみてね!」

(埋もれている)ホラー映画ベスト5

1・牡丹灯籠

山本薩夫監督作。ある若い旗本・新三郎が、ふと知り合った女性…お露とその侍女。二人は没落士族の身で、金貸しの手で、吉原へ売られてしまい、もうすぐ客をとらなくてはならなくなる運命にあった。お露は武家の娘として耐えがたい思いをする前にと、新三郎に抱かれるのであった。
彼女の身の上を哀れに思った新三郎は、請われるままに、お露と祝言をあげるのであった。その夜からその後も二人の女性は、夜な夜な新三郎の元を訪れ、逢瀬を重ねる。
その後、新三郎が吉原へ訪ねてみると、店の者に、二人がすでに自害して果てていたと知らされる。
二人は、もはやこの世のものではなかったのだ。日に日に死相の浮き出てくる新三郎。恐怖のあまり、その夜もやってきたお露を、消えろ!と、ふりはらうのだが…
「ここで、新三郎は、侍女から、思いがけない一言をあびせられるのね。なぜお嬢さまを忌み嫌うのです。なぜ、よくぞ操を守ったと、なぜ、お褒めになって差し上げられないのですか!」
その言葉に、新三郎は、動揺する。そして、泣きながら去ろうとするお露の手を、思わず取って、引き留める…。
「大感動するシーンよね。幽霊の、スーッと虚空をすべるように進んでくる描写も怖いけど、怖さと哀切さが一体となったこの名づけようもないような感動、これは絶品だったよ。それからも、怖いシーンが続くんだけど、切ないのよねえ…」

2・XYZマーダーズ

「死霊のはらわた」に続く、サム・ライミ監督の第二作。とにかく、悪い夢が延々続くような怪作。
二人の野暮図な死刑執行人が、所かまわず殺人を繰り返していき、それを追う、チンケでヒヨワな青年が、なんとか恋人をとりもどそうと、ヒーローもどきの活躍をする…。
話があっちへ行ったりこっちへ行ったり、まさに、悪夢の泥沼に足をすくい取られたような、脈絡のなさで、超展開をくりひろげる…。
サム・ライミは、後に大物監督になり、ヒット作しか生まなくなったけど、こっちのほうが、あたしは、好きだな。
映画としての評価は、高くないみたいだけど、好きなことをとことんやったという事に関しては、これが一番じゃないのかな、と思ってる。

3・ピクニック at ハンギング・ロック

TVで見て、衝撃を受けたのよね。NHKだったかな。
「刑事ジョン・ブック」などで有名なピーター・ウィアーの作品で、実際の事件を元にしているの。
1900年代のはじめ、オーストラリアのハンギング・ロックという山に遊びに来ていた女学生たちが、突如失踪してしまった。どこを探してもいない、死体すら見つからない…。
映画は、その当時の目撃者であった老人たちに、いったい何があったのか、丁寧に、ひとりひとり、談話を聞き取る事から始まる…。
「当事者たちがポツリ…ポツリ…と話していく様を、カメラはじっと、静止したまま撮り続けるのよね。それが、だんだん、怖くなってくるの。最後のほうになると、もうやめて!と言いたいくらい怖いの。あの、じんわりした不可解さと怖さは、CGを使ったいまのホラー映画じゃ、絶対に不可能な怖さだったなあ…」

4・死霊の罠

「人魚伝説」で知られる鬼才・池田敏晴監督が撮った、石井隆脚本のホラー映画。低予算なんだけど、映像のスタイリッシュさと、演出の静謐さで、とにかく、魅せる、魅せる。
とある廃屋に閉じ込められた男女のグループが、一人、また一人と、不条理な殺され方をしていく…という、ある意味王道をいくような作品なんだけど、この監督が撮ると、いっきに、見るものを陶酔させるようなホラー・ファンタジーになるのよね。
まあ、低予算がゆえの、特撮のショボさとか、文句を言えば際限がないんだけど、これほどの完成度をほこるホラー映画は、日本にはいまだ現れていないんじゃないかな。小野美由紀の代表作だろうね。
これからも、こういう気合の入ったホラーを撮ってくれないかなと期待してたんだけど、この監督、ついに果たさず、自殺しちゃったんだよね…。

5・デッド・ゾーン

スティーヴン・キングのホラーの映像化の中では、これが一番うまくいってるんじゃないかな?「シャイニング」「ペット・セマタリー」は怖くなかったし、「IT」なんて、笑っちゃったし。(「ショーシャンクの空に」は、ホラーじゃないから、別だよ)
詩情があるのよね。超能力者であるがゆえの孤独というか…そんなものを、クリストファー・ウォーケンが絶妙に演じていたね。お話としても、かっちりまとまっていて、本当にいい余韻を残す映画だったよ。

選外

ファントム・オブ・パラダイス

ブライアン・デ・パルマの初期の傑作よね。まあ有名どころだし、これをホラーと呼んでいいかどうかわからなかったので、選外にしたけど…。
ミュージカル仕立ての怪異談というのが、異色よね。撮影もすばらしい。同時に三台のカメラで同一場面を撮り、画面が分割された状態で観客に示されるところなんか、うなっちゃった。何てうまいんだろう、って。

おまけ

サイコ

言わずと知れたヒッチコックの最高傑作。有名すぎるから外したけど、ホラー映画ベストを選ぶとしたら、やっぱりこれになるんじゃないかな。
この映画のストーリーを何にも知らない人は、ぜひ、余計な情報を前もって仕入れずに、まっさらな状態で見てほしいな。途中で、話が、どうなるのかとまどい、どんどん悪夢の彼方へ引きずられていく感じが味わえるから…。

「そんなこんな言ってるうちに、夏も終わっちゃうね!もっとはやく紹介できればよかったんだけど、どれも面白いから、夏とはかぎらず、未見の人はぜひ見てみてね!あと、あたしも映画に詳しいわけじゃないから、もっと、面白いこんな作品があるよ、って、思った人は、教えてね!じゃあ、またね!」

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