最近読んだ本5冊

「今日はちょっと趣向を変えて、最近読んだ本の感想を、ランダムであげていくね!」                                      「いつものように、一冊ずつ取り上げて、読みどころを引用していくやり方にはしないの?」
「うん。面白いことは面白いんだけど、あたしの脳汁ドバドバ、頭をつきぬけるような、超絶おススメ、ってほどじゃないかな、…だけど、徹夜本には間違いないし、まあ、そこそこ面白かったかな、って本なの。話題作ばかりだから、こういう紹介もしておいたほうがいいんじゃないか、って思って。」
「ふーん。まあ、手短に紹介する、ってところね。」
「じゃあ、5つ紹介するね!」

「屍人荘の殺人」(今村昌弘)

まず設定が奇抜。ゾンビに囲まれた密閉空間における連続殺人。その犯人はだれか?という、クローズド・サークルもの。文章が軽快。その推理過程は、言ってしまえば、アリバイものなんだけど、最後らへんの、叙述トリックも含めて、ミステリとして良く出来てるなあ、という感じ。ミステリに超常現象を持ち込むというのは、ちょっと、話がうますぎるんじゃないの、とも思ったけど、そこそこ楽しめる。青春小説としても読めるしね。退屈な時読むには最適じゃないかな。

「三体」(劉慈欣)

中国SFの巨編。バーチャルリアリティの世界と現実とを行ったり来たりのハイパーな構成。この話、どうなるの?という興味で最後まで読ませる。でも一番面白かったのは、主人公の父親が文化大革命の犠牲になるあたりかな。中国国内でも、毛沢東崇拝時代は、もう過去のものになりつつあるのかな。ちょっと不満だったのは、最後らへんに出てくる、敵の描写が、いかにも安物チンピラじみてて、スケール感がだださがりだったことかな。でも、その敵が、地球に向けて放った攻撃手段ってのが、分子レベルのものだった所なんか、おお、SFだー、センス・オブ・ワンダーだ、と、楽しませてくれるね。続編も出たけど、読むかなあ…。

「medium 霊媒探偵城塚翡翠」(相沢沙呼)

超人的な霊力によって、推理するより前に、犯人が分かってしまう、少女探偵。その推理をおぎなう役割を果たしていかねばならないワトソン役の主人公。おお、そうくるか、そこまでやるか、と思える強引な推理合戦が面白いね。最終話の趣向も面白い。何を言ってもネタバラシになってしまうから、これ以上は言えないけど、よく考えたなあ、こんな話、という驚きしかないね。ちなみにこの作品、2020年の本格ミステリ大賞の一位を取っているね。


「ノースライト」(横山秀夫)

週刊文春のミステリーベスト1に入ってたから、読んでみたのよね。主人公は家の設計技師。1年前に、ふらりと現れた謎の依頼人に、「あなたの心行くまで自由に設計された、理想の家を作ってください」と依頼され、いままでの人生でもっとも満足のいく、理想的な別荘を作るのよね。ところが、それ以来、依頼人の消息が不明になってしまい、別荘は、誰も住まないまま、放置されるがままになっていた…。すでに引き渡しは済んでいるとはいえ、いったい何があったのか、気になる。自分の気持ちに決着をはかるため、主人公は、この謎と依頼人の失踪先を探る旅に出る…というものね。謎は魅力的で、また、主人公をめぐる業界人たちの、ある種ひねこびた感情のドロドロをこれでもかと描き、ラストには、全てのパーツがパズルを複雑な完成させたときのように、嵌め込まれて、読むものに快感を味わわせる…。まあ、途中の、男の意地を強調するあたり、業界の闇を探るあたり、胃もたれがして、少々疲れないではないけど、面白かったな。


「64」(横山秀夫)

同じ横山秀夫で、代表作とも言えるこれを読んでなかったので、勢いでこれも読んでみた。警察の報道官というと特殊な任務につく主人公。連続誘拐事件とゆくえと、主人公らと対峙する新聞記者らとの駆け引き、主人公の家庭の問題、あらゆる謎が入り乱れ、そして、これも、「ノースライト」と同じく、業界内のドロドロが7これでもかとぶちまけるように描かれ、読み応えといえば、こっちのほうがあったかな。でも、おじさんたちの社会におけるプライドをかけた戦い、という横山作品のテーマみたいなものは、共通していたように思うね。最後、解かれないままに終わってしまう謎もあるんだけど、それも、深い余韻を残すという効果があったんじゃないかな。

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